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温泉好きな人たちのお湯へのこだわりは並大抵のものではありませんね。
ここでは今一度【温泉とは何か】その定義を確認しましょう。
温泉の定義
日本には温泉の利用や保護を目的にした法律“温泉法”が定められており、温泉をこのように定義しています。
「温泉とは地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げられる温度又は物質を有するものをいう」
(温泉法第2条)
水蒸気およびその他のガスだなんて、我々が普段目にする温泉のイメージとは少し離れた印象を受けたでしょうか?
空気以外の気体を示し、二酸化炭素や窒素がこれに含まれます。ただし後述する温泉の条件を満たしたものが適応されます。
炭化水素を主成分とする天然ガスとは、メタンガスやプロパンガスといった都市ガスのような燃料に多く使用されるガスのことです。温泉とは使い道が全然違うことから分かるように、これらは温泉とは別ということですね。(法律的には、可燃性天然ガスは鉱業法の適用鉱物となっています)
温泉の条件
1.湧出時の温度が25℃以上ある
2.指定された特定の成分(18成分)が1成分でも規定濃度以上含まれる
3.溶存物質の総量が1000mg/kg以上ある
1~3のうちどれか1つでも当てはまれば温泉ということができます。
指定された成分とはどのようなものがあるか、別表を見ましょう。
物質名 | 含有量(1kg中) |
溶存物質(ガス性のものを除く) | 総量1,000mg以上 |
遊離炭酸(CO2)(遊離二酸化炭素) | 250mg以上 |
リチウムイオン(Li+) | 1mg以上 |
ストロンチウムイオン(Sr2+) | 10mg以上 |
バリウムイオン(Ba2+) | 5mg以上 |
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+)(総鉄イオン) | 10mg以上 |
第一マンガンイオン(Mn2+)(マンガン(Ⅱ)イオン) | 10mg以上 |
水素イオン(H+) | 1mg以上 |
臭素イオン(Br–)(臭化物イオン) | 5mg以上 |
沃素イオン(I–)(ヨウ化物イオン) | 1mg以上 |
ふっ素イオン(F–)(フッ化物イオン) | 2mg以上 |
ヒドロひ酸イオン(HAsO42-)(ヒ酸水素イオン) | 1.3mg以上 |
メタ亜ひ酸(HAsO2) | 1mg以上 |
総硫黄(S)[HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの] | 1mg以上 |
メタほう酸(HBO2) | 5mg以上 |
メタけい酸(H2SiO3) | 50mg以上 |
重炭酸ソーダ(NaHCO3)(炭酸水素ナトリウム) | 340mg以上 |
ラドン(Rn) | 20(百億分の1キュリー単位)以上 |
ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg以上 |
平成26年 環境省自然環境局より
これらの成分が温泉の性質を決めるといってもいいでしょう。
注意点として、この成分量は温泉が湧出したその場所の成分だということです。実際に我々が入浴する際は、お湯を湯船に移すときに空気に触れて酸化したり、揮発することもあったり、人がたくさん出入りするだけでも成分量に変化がでます。
ですから、温泉地に掲示されている分析表とは成分の量が異なることがあります。
天然温泉と人工温泉
源泉の温度や成分濃度が、温泉法の基準を満たしたものが温泉であり、これを天然温泉といいます。
もともとは地上に湧出した(これを自噴という)温泉を指していましたが、現在は温泉基準を満たした本物の温泉という意味で使われています。
対して人工温泉というのは、湧出した時点では温泉ではないものに、熱を加えたり、何らかの成分を添加したりして温泉基準を満たすようにした温泉です。これは入浴剤や薬草風呂でよく見られますね。
温泉に手を加えてもよい
温泉の定義が源泉の成分量と温度からなるということ、天然温泉と人工温泉の違いについてみてきました。
温泉マニアな方々はそこで疑問が湧いてくるのではないでしょうか?
「源泉に加温したり、加水したりしたらもう人工温泉になってしまうのでは?やっぱり源泉かけ流しが本物だね!」
実は温泉法では、源泉の成分が基準を満たした温泉に対して、加温・加水もしくは他の成分を加えてはいけないという旨は書かれていないのです。
これには理由があり、そのまま使用すると濃度が濃すぎてかえって体に有害になったり、温度が低すぎる、もしくは暑すぎて入れなかったり、レジオネラ属菌等への対策であったりと我々の健康を守るためでもあります。必ずしも源泉かけ流しが優れていることにはならないのです。
しかし、手を加えることについて何も言わないのは利用者に対して誤解や不信感を招くおそれがあるので、温泉法施行規則では温泉を加温、加水、消毒等を行った場合は、その理由とともに明記するよう義務付けられています。