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日本は温泉大国です。山に行けば火山由来の温泉が湧き出て、平野部に行けば地下に眠る海水が地温によって温められて温泉として湧き出てきます。
では海はどうでしょう?
もちろん海にも温泉が湧いています。ただし特殊過ぎて普通の人は入れません……!?
人が入れない温泉
海底温泉とは摂氏2~4℃の地下1000m以上の海底で水温が300℃以上という超高温の水が噴き出す場所のことです。
実際は温泉という言い回しはせず、「海底熱水」という方がメジャーです。海底熱水が噴き出す場所を熱水噴出孔と呼びます。
ちょっとした疑問として、水は100℃で沸騰して気体になるのだから、熱水噴出孔から出ている海底熱水って気体として出ているの?と感じます。
これには物質の三態が関係しています。気体・液体・固体のどれになるのか決まる条件は、温度以外にも圧力が関係しているからです。
図の1.013×105 Paが地上の圧力(大気圧)です。
海底1000mは我々が暮らしている地上の約100倍の圧力が掛かっているため、液体のまま沸騰しないということです。地下1000mの海底の圧力をグラフで言うなら2.208×107 Paのちょい下くらいです。
また、水深が2200mを超し温度が374℃の場合、高圧と高温で水が超臨界状態(気体と液体の中間みたいなもの。超サラサラで超酸化力の高い水)となるため、熱水が超臨界状態になっているポイントもあります。
写真中の黒い噴煙が出ているように見えるものが海底熱水です。
熱水そのものは透明ですが、熱水に含まれる成分(鉄、銅、鉛、亜鉛、金など)がまわりの海水と触れることで、酸化物や硫化物が発生し黒く見えるのです。
この酸化物や硫化物は、辺りの海底に堆積して円柱状の構造物をつくることがあります。煙突のような形から、チムニーと呼びます。
チムチムニー、チムチムニー、チムチームニ~♪と覚えてしまいましょう。
海底の温泉とはいえどこんな過酷な環境なので、入浴(棲息?)できるのは熱水噴出孔から栄養をもらうバクテリアやバクテリアを食べる微生物、それ目当てで集まってくる貝や魚、カニなど、地元住民限定ということです(笑)
発見の経緯
1977年アメリカの深海底調査船が、東太平洋のガラパゴス諸島沖の海底2500mのところで海底熱水とチムニーを発見しました。
その後、メキシコやカナダ、カリブ海にも存在することが明らかとなり、熱水周辺の環境には特殊な生態系が築かれていることも判明しました。
熱水のもたらす資源
温泉地や海底の熱水から生成される沈殿物は鉱物資源(鉱石)として利用することが出来ます。いわゆる熱水性鉱床で、特に海底から噴出する熱水からつくられる沈殿堆積物の鉱床を海底熱水鉱床と呼びます。
日本独自の鉱床として黒床というものがあります。銅、鉛、亜鉛などが硫化物として出てきた黒色の鉱石のため呼ばれており、主に東北地方の鉱山に分布しています。
黒鉱は海底熱水鉱床と同じ組織を持っているため、かつては海底温泉が存在していた場所が鉱山になったと推測されます。
日本にはあるの?
現在なお海底温泉として存在しているのは沖縄県の伊平屋、伊是名周辺と石垣島周辺。伊豆・小笠原諸島の海底です。
中でも石垣島周辺はメタンガスが噴出しており将来の資源としても有望視されています。