温泉が湧き出る土地には有毒なガスや高い熱、強い酸やアルカリが存在するなど、生物が住みにくい環境になっていることが多くあります。
その中でも、生まれも育ちも温泉という変わった動植物も存在しています。
今回は温泉生物を見ていきましょう。
この世には地獄がある
高温のガスや地熱、熱水で生き物が生育しにくい地形を“地獄地形”といいます。
酸化力の強い硫化水素、二酸化硫黄が火山性ガスとして立ち込めることで土壌の酸性化が著しく、植物が生えにくくなっているのが原因です。
地獄地形の特徴は、表面が変質しゴツゴツした岩肌、グラグラと煮えたぎる温泉、鼻をつく硫黄の匂い(大体は腐卵臭と表現されます)……地獄と例えられるに相応しい景色です。
温泉生物とは
地獄地形のなかでも懸命に生きる生き物たちがいます。
これを温泉生物といいます。
動物や植物として肉眼で見える生き物や、温泉水中に温泉バイオマット(生物皮膜)として、緑や茶色といった皮膜を作ることではっきり見える微生物もいます。
温泉生物として知られているものは動物で約300種類、植物や微生物の仲間で700種類ほどいるといわれています。
生育できる温度やpHには差があり、100℃程度の温泉やpH1~2の強酸性、pH9以上の強アルカリ性で生育できる生き物もいれば、41℃程度までは生育できる生き物もいます。
温泉生物の中でも注目すべき 硫気孔植物
硫気孔植物は、火山あるいは温泉地付近の硫気孔の周囲で生育し、高濃度のアルミニウム※、酸性土壌に強い植物です。
※アルミニウムは植物の根の成長を阻害します。ここでアルミニウムの話を出した理由は、pH5.0以下(酸性土壌)になるとアルミニウムイオンとして土壌に溶けだし、植物がそれを吸収してしまうから。
硫気孔の中心部から近いところには硫気孔植物が生育しますが、離れていくにつれて植物の種類が変わっていきます。
これは地面の風化を示しており、時間の経過や環境の変化からどのような過程を踏んで生態系が変化するのかを知る手掛かりとなります。
反対に「この植物が生えているから強い酸性土壌なんだなー」と予測を立てることもできます。
温泉生物を観察しよう
細かいことは置いといて、まずは観察あるのみ。
温泉生物のうち、植物を中心にピックアップしました。
背が低いのが特徴ですね!
イソツツジ
ミヤマキリシマ
シロドウダン
ガンコウラン
ヤマタヌキラン
シラタマノキ
イデユコゴメ(藻類)
チャツボミゴケ(コケ類)