【理系向け】お金がなくて進学できないなら職業訓練校もアリ

理系進学を希望しているけれども金銭的な事情があり、専門学校や大学に進学できないと思っているアナタ!

朗報です。公的な職業訓練施設があります。

大学とは違い学術的なことはあまり触れませんが、理系分野の中でもプログラミング、電工系や機械系、化学系ならば十分に活用できますのでこれを使わない手はありません。

私は環境分析科で化学を勉強し、就職。何度か転職し、基礎研究の現場まで行きました。

今回は進路指導では中々明かされない職業訓練校の内容を紹介していきます。

以下の内容は、大阪府立南大阪高等職業技術専門校 環境分析科の例です。

職業訓練校とは

ものすごく簡単に言うと都道府県が職業支援の一環で建てた学校みたいなものです。

“習い事をしに行く施設”といった方が正確かもしれません。

それでも一応は高校卒業程度の筆記試験(数学・国語)と面接が行われます。難易度はかなり緩い方ですので、配布されている過去問を解きましょう。

支援の一環なので授業料は格安になっています。学校ではないので補講も留年も卒業もありません。卒業の代わりに修了と言われます。

講習の最後には学科試験があるので、それをクリアすれば「技能士補」の資格が貰えます。(事務系など、資格が貰えない学科もあります)

お金はいくらくらい掛かるのか

大阪の職業訓練校は大体こんな感じです。毎年変更されるのでハローワークに置いてある資料を直接確認した方がいいと思います。

環境分析科の場合

  • 入校選考料 2,200円
  • 入校料 5,650円
  • 授業料年額  118,800円
  • 教科書代等 22,000円(カリキュラムで結構変わるかも)
  • 資格取得のための受験料等 40,000円(受ける数でかなり変わる)

昔は授業料なんてなかったのですが、理系の中でも非常にコストの掛かる学科なのでとうとう請求が来たかーって感じです。

これでもリターンを考えれば超安いです。

1年勉強した内容を武器にして、マトモな会社に就職したら1か月の給料ですぐ挽回できます。

なんだったら、そこからお金を貯めて大学で学位でも取ればいいのです。(私は結局10年近く働いてしまって学位取っていません……)

それくらい重要な事を勉強します。

環境分析科の授業内容について

環境分析とは何か?水質・地質・大気など生活環境や作業環境がどうなっているのか調べる分野です。環境汚染を未然に防ぐ役割を担っています。騒音や振動を調べることもあります。

授業内容は公式HPに乗っています。実際にどんな感じなのか、記載されている内容(2017年時)を引用して解説を入れていきたいと思います。

座学分野

基礎化学

分析化学を中心に物理化学、無機化学、有機化学、生物化学、化学工学、工業化学など幅広く化学の基礎を高校レベルから学び直します。

めっちゃ大事です。書かれている通り高校化学のテキストを使って一からやり直します。完璧でなくてもいいですが、ここを疎かにすると就職後に痛い目を見ます。

授業が進んでいくとエンタルピー、エントロピーなど大学の初等レベルもやります。

後期に入ると科学英語もやります。地味に役に立つやつです。

環境法規

環境基本法を初め、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、騒音規制法、振動規制法、循環型社会形成基本法といった環境関係の法律を学びます。

私はあんまり使わなかった知識ですが、環境方面に進むなら必須です。

公害防止管理者や環境計量士では当然問われる知識になります。

環境法規は過去の公害問題(水俣病や四日市ぜんそくなど)が背景にあるので、化学技術とその取扱いの重要性が理解できるかと思います。

資格対策

公害防止管理者(水質第4種)、危険物取扱者(乙種第4類)、毒物劇物取扱責任者、品質管理検定といった環境関係の資格取得を目指し、対策授業を行います。

資格試験は履歴書でアピールする用に2個くらい持っておけば、コストパフォーマンスが良いです。

化学分析の技術者として就職するなら、危険物取扱者と環境計量士だけで十分だと思います。(“実務能力のポテンシャル”をアピールするという目線で選んでいます)

危険物の乙4種は簡単でさくっと取れるけど需要もあるし、環境計量士は試験内容が大学初等レベルを想定しているため勉強している証明になります。

環境計量士は化学の難易度が高過ぎる(受講生のレベルに対してキツイ)ため授業では扱いません。独学になります。しかし公害防止管理者と内容が一部被っているので「公害防止管理者そのものに就職しないのであれば、環境計量士がいい」という意味です。

資格対策の授業そのもの関しては、公害防止管理者がメインになると思います。しかし、公害防止管理者は水質第4種ではなく、第1種を狙う方がいいです。

危険物取扱者(甲種)と違って受験資格に制限がないので、最初から最高位の第1種を狙った方が時間とお金を節約できるからです。

お金と時間に余裕があるなら、環境計量士と公害防止管理者の両方を受験してもいいと思います。

毒劇物取扱責任者は、化学系の大卒が無試験で貰える資格なのでゴロゴロいます。わざわざ自費で受験する価値がほとんどありません。

品質管理

製造業への就職も視野に入れ、PDCAサイクルやQC7つ道具、サンプリング手法と標準化、実験計画法と相関回帰分析など、生産管理の基礎を学びます。

非常に地味な内容なので、眠いのなんの(笑)

実用的な知識なので覚えておいて損はありません。それどころか得になります。

環境計量士では試験に出る内容です。「あ、これ進●ゼミでやったところだ!」って心情になれます。

実技分野

滴定実験

中和滴定(食酢中の酢酸の定量など)を初め、沈殿滴定(モール法など)、酸化還元滴定(CODの測定など)、キレート滴定(河川水の硬度測定など)といった容量分析の基礎を学びます。

分析化学の基本は滴定にあり!

化学の基本は量と比の関係です。

滴定実験は、既知濃度の溶液を使って未知試料の濃度を調べる基本的な実験です。

実験でやったことはしっかり押さえておきましょう。安全衛生や秤量の仕方といった常識レベルのお作法もここで習得しましょう。

定量(これナンボ?と量を調べること)が出来れば、定性(これなんや?と物質を調べること)も出来るようになります。

理論を覚えるのも大事ですが、何よりも、よく見て観察し、手の動きを感じ、五感をフル活用させて身体で覚えましょう。

化学屋は動いてナンボです。

データ解析

単に実験方法を覚えるだけでなく、得られた測定データを解析し、バラツキを少なくする統計的な手法を学びます。

パソコン実習室で表計算の課題演習を行います。

これは重要。数学嫌いでも頑張りましょう。

Excelと関数電卓を使うので、そんなに難しいことはないと思います。

科学系の職業全般に言えることですが、高校数学の素養はある程度持っておいた方がいいです。まずは数Ⅰ、数Ⅱ程度。将来ハイレベルな分野に挑戦したいなら数Ⅲも。

現状ではすでに会社のシステムとして組み込まれていて、特に自分で計算しなくても済む場合があります。しかし、自力で計算しなければならない場面が出てくるかもしれません。

将来研究分野に進む場合、実験・解析・データ処理・考察まで全部自分でやることになります。高校数学が必要になるのはそのくらいから。文献を読んだとき数式だらけで一瞬で躓きます(笑)

機器分析

液体クロマトグラフを初め、ガスクロマトグラフ、原子吸光装置、赤外分光光度計、紫外可視光度計、イオンクロマトグラフなど幅広く分析機器の操作法を学びます。

超重要!!

操作法を習得するのは授業時間的にまず無理です。本気で習得するなら毎日触る必要があります。実際は数回操作する程度に留まり、授業時間が間に合わない機器がいっぱいあります。

それを踏まえた上で、クロマトグラフィーの原理・機械の構造をきちんとマスターしましょう。ここでも“量と比の関係”は出てきます。

化学分析において機器分析は一番よく使われる手法なので、非常に大事な分野になります。

就活していると面接で聞かれることもあります。

私の場合、某大手製薬会社の面接で質問されました。

面接官「HPLC(高速液体クロマトグラフィーの略語)の構造を説明してください」

「忘れました!教えてください!」

その場でため息つかれましたが、親切にちゃんと教えてくれました。面接の最中なのに。

おかげで説明できるくらいにはバッチリ覚えることが出来ました。おっちゃんありがとう!!

――当然不採用です(笑)

就職指導

挨拶や言葉遣い、電話の応答などのビジネスマナーと、就職に必要な自己分析を学びます。自己PR文や履歴書、職務経歴書を作成したり、模擬面接を行います。

個々の生徒の希望と能力を把握し、企業側が求める人材とのミスマッチが起きないよう、指導しています。

私の代ではやった記憶がありません。

新しく増えた指導かも。

校外活動

年に数回、環境や分析に関する施設(大阪市・舞洲清掃工場、大阪市・下水道記念館、舞洲PCB処理施設、いずみ生協・商品検査センター)を見学して、見識を深めております。

要は遠足です。

いい年をした大人たちが遠足だなんて……おっさん珍道中でめちゃくちゃ面白かったです(笑)

就職の実態

専門校の方から就職斡旋もしてくれますが、所詮はハローワーク系列の残念クオリティなので就職先はあまり期待できないかも……

むしろ10代20代はハローワークを使うなと言いたい。9割ハズレです。

人事にお金を割けない企業が、若い技術者をマトモな待遇で雇えるか疑問です。

残り1割の当たりはお人好しな企業かも。

環境分析科の就職率に関して、平成27年度生の就職率は74%と悪くない数字です。

純粋に科学関連の仕事に就いた数字ではないので、果たして実態はどうだろうかとも思います。(私の代はコンビニの店長になった人がいた。予想外だ!)

就活で決まらない原因は実務経験と年齢が壁になっていると思われます。正社員登用では10代や20代は超有利になります。派遣社員なら一瞬で決まりますね。

有名企業だと若くても実務経験と学歴がネックになるので、上手く立ち回る必要があるかと思います。

もう一つ、特殊な事情があります。

それは受講生が「就活しない」こと

なんやそれは!?と思いますよね。私もなんやそれ!?と思っています。

受講生がもっと本格的に勉強したいと思って専門学校に進学した例もあるし、研修目的で在籍したあと元の職場に戻っていった人もいます。

これはずっと良い例で、悪い例になると「楽しかったね~」と終了してしまうことがあります。

本当に習い事で終わっちゃった例です。

適正がなかったと自分で気づいて辞めちゃったのかもしれませんけど……

どんな人たちが通っているの?

18歳~50歳そこそこの男女、メイン層は20~30代の男性です。

おっちゃんもチラホラいます。

高校卒業から直接入校した人はほとんどいませんでした。(高校の進路指導で職業訓練校が知られていないこともある)

雇用保険のお金目的で来ている人も多くみられます。

職業訓練校なので基本的に緩いです。入校試験も超ユルユルの為か「何しにここ来てんだよ」って人もうっかり入校しちゃいます。

笑って許してください。

安いだけあって質は保証できない

注意点が一つ。教師陣の指導力にはめちゃくちゃバラツキがあります。

かなり上手な教え方をしてくれる人がいる一方、「音声読み上げソフトか!」って授業をする人もいます。

こればっかりはどうしようもないので、自分で勉強する習慣を付けましょう。受け身だと授業時間の90分が非常に辛いです。(授業が面白くないという意味で)

先生という存在に期待してはいけません(笑)

職業訓練校の使い方

職業訓練を受けてもまず即戦力にはなりません。仕事で教えられたことを効率よく身に着ける土台作りのために訓練をする場所なのです。

実験と考察はどんどんやりましょう。実験技術と作法を身に着ける為に職業訓練校に通うといっても過言ではないです。

この学科のコアとなる部分は分析化学です。

環境は身近な話で抵抗感なく勉強するためのオマケみたいなもんです。

分析化学が理解出来るようになれば、技術をもっと発展させて新しい機器に挑戦したり、新しい実験法を考えたり、有機合成分野に進出することもできます。もっと言えば、キャリアパス次第で物理・生物・化学のオールジャンルをまたぐことも可能です。

経験を積めば分析化学自体がオールジャンルをまたいだ分野であることに気が付くでしょう。

――そう、お金がなくても調理次第でいくらでも美味しくなるような素材――

職業訓練校は将来理系分野の就職を目指す手段として有益なものとなります。

でも奨学金でいけるなら大学行った方がいいと思います。もしくは職業訓練校で学んでから就職して、貯金が終わったらさっさと進学するとか。

あくまで自分の経験からですが、研究職を目指すなら大学の方が費用対効果として有利と思います。やがて必要になる場面が出てくるかもしれません。

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